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南会津 三岩岳山スキー(やむなくフォーストビバークのおまけつき) 

  2008.03.01〜02   金田  晏

 日帰りの登山計画であったが下山時にルートを誤りやむなくフォーストビバークする羽目になってしまった。フォーストビバークをしなければならなくなったことは失敗である。会長、最寄の警察署、留守宅の妻には心配をかけてしまったことは自戒と反省をしこれからの山行に役立てたい。バックカントリースキーのみならず登山行為そのものが自己責任で行なうものである。悪天候での路迷いや体力の消耗、怪我等を克服して安全に下山するには、危機管理についての心構えと最低限の装備や医薬品の携行は怠ってはならない。以下は失敗山行の顛末記であるがフォーストビバークを克服するのも登山術の一つではなかろうか。

3月1日(土) 終日風雪
 4時半自宅を出るときは満点の星空で快晴であったが栃木、福島の県境のトンネルを抜けると南会津は吹雪だった。小豆温泉入り口のR352の隧道脇の駐車場に7時20分にパーキング。7時55出発、隧道を少し戻って尾根に取り付く(780m)。一ヶ月前に会津駒ガ岳に来たときより積雪量も増え小潅木が埋まってとても斜面が登りやすい。899.3mのピークに8時40分到着、テレビ中継アンテナが立っているが、これが後に携帯電話の中継の一助になろうとはこの時は全く思わなかった。ピークから痩せ尾根となりブナ平(1308m)への長い登りとなる。降りしきる雪、重い雪質、徐々に深くなるラッセルにボディーブローのように脚の筋肉に打撃を与える。コンパスで進行方向を確認するとき以外はほとんど休まずにひたすらラッセルを続けて1308mの広い台地状のブナ平に11時に着く。

 ルートはここから小コルに下って素晴らしいブナ林の大きな尾根への登りになるが、今日は山頂主稜線から吹き降ろす風雪をまともに受けて登らなくてはならない。フェースマスクにゴーグルそしてヤッケのフードを下ろして烈風に備える。斜度が緩いので直登するも深雪で遅々としてペースが上らない。漸くブナ林帯を抜け針葉樹林帯に入ったところで(1650m)14時になってしまったので登高を断念、写真を1枚撮るもレンズカバーが凍ってしまって閉じなくなる。仕方が無いのでザックの中へ放り込んで滑降開始、10分前に刻んだラッセル跡も跡形も無く消えうせ急斜面はいいが緩斜面では下りラッセル状態でブナ平へ登り返す小コルでシールを張って下ることにする。

 1308mのだだっ広い台地で完全にホワイトアウトになったので地図とコンパスで南東140度方向めざして下るも登りの斜面のイメージと違う、緩斜面から急斜面のブナ林を下って痩せ尾根になるはずだが緩斜面がいやに続く、間違ったかなと思い1308mの台地まで引き返し再びコンパスを頼りに慎重に下りイメージ通りの斜面の上に出る。地図で確認し斜面を下りきり痩せ尾根を少し下って尾根が二分している所にぶつかり誤ったルートを下っていることに気づく。時計を見ると16時40分、最終下山連絡が17時だがもはや下山は不可能だ。そのときテレビ中継アンテナのことを思い出し、現在地が大体判っているので少し尾根の高みまで戻って携帯を試してみるが「圏外」の表示、頭上に高く上げてゆっくり360度回ってみると一方向だけ「圏外」の表示が消えるところがあり、空かさず妻の携帯にしてみると呼び出し音が鳴っているがなかなか出ない。

 何度目かでやっとつながり「ルートを間違えビバークする」と言うと切れてしまい電池が無い赤線一本状態になり低温劣化の兆し。直ぐ懐でしばらく温めると快復し妻から「大丈夫?」とのコール、「大丈夫だ」と答えるとまた切れてしまった。17時29分であった。その後登山届けを出した南会津警察署に何度もかけるがなかなか出ない。18時頃、明るいうちにビバーク地をさがさねばと電話を諦めて吹きっさらしの尾根を適地を探しながら下るも風を避けるところが無く結局尾根の末端の傾斜の緩い斜面の末端を回りこんで風の当たらないところを選んで一抱えもある太いミズナラの木の根元を一夜のビバーク地に決める。未だ明るさが少しあるので確認できる範囲の周囲の地形を頭に叩き込んでビバーグの用意をする。

 木を背もたれに左右に雪壁を残し真ん中を踏み固めてスキー板の滑走面を上に2本並べてベンチ状にしてツエルトを被り入り口にストック2本を立ててツエルトを固定し風の進入を防ぐ。体温保持のためインナー用のダウンを着込んでレスキューシートをスッポリ被り、座布団代わりに6o×10mのロープをツエルトを巻き込んで敷いて座ればビバーク態勢は完了。温かい飲み物を沸かして一息つく。食料はアンパン1、どら焼き1、大福1、ベビーチーズ2、胡桃1袋、チョコレート、ソイジョイ4、カロリーメイト1箱 飲み物はコーヒー、ココア、コーンスープ、レモンウオーター。燃料はガス缶225g1缶 非常用暖房にローソク(太目)2本とビニール風呂敷1枚。以上の物で2日間のビバークを耐えなければと計算しながら使わなくてはと長い夜の暇つぶしに考える。

 さて地形図をじっくり読むと現在地は正常ルートの尾根と谷を隔てた1本東に派生する尾根にいると判断する。1308mの台地から最初に下ろうとしていた所を谷の源頭を回りこむように下ればグッドだったのだ。引き返して手前から派生する尾根を下ってしまったのだ。ホワイトアウトでは往々にして出くわすことだが、少しでもガスが薄くなるのを待つべきだったかも知れない。脚の間にローソク2本を立て脚をビニール風呂敷で被えば下半身全体がとても暖かくガスコンロを最小に絞って燃やしてみると何んと34℃にもなり濡れた手袋、湿った靴下、帽子、ハンカチ等みんな乾かせてしまう快適さである。暖かさについザックにもたれて寝てしまいビニール風呂敷が所々溶けて穴が開いてしまった。ガスは1缶しかないので先のことを考えて節約することにする。ローソクだけでも暖かい。

 尾根を吹き荒れる風の音を聞きながらうとうとしている時だった。風の音の合間に「オーイ」と男の声で呼ぶ声にはっと目が覚める。時計を見ると午前1時過ぎだ、こんな時間に?空耳かなと思っているとふたたび風の音がひとしきり吹き渡り静かになると「オーイ」と男の呼び声!今度は空耳ではい!確かに人間の男の声だ。その後何度かその呼び声は間を空けて聞こえたが、やがて尾根を吹き渡る風の音だけになった。警察署に下山連絡が無いからといって天気の悪いしかも真夜中に捜索隊を出すわけが無い。ツエルトから出て声の聞えてきた方向をライトで照らしてみたが降りしきる雪が光って見えるだけで谷なのか尾根なのか何も見えなかった。

 ツエルトを被り直して暖ををとり、熱いコーヒーを飲みながら出発前に南会津警察署の登山計画書を見た担当の人から警告に近い忠告があり、その時の会話で聞いた話を思い出していた。その話とは4〜5年前に一人で三岩岳に登った人が行方不明になり未だ見つかっていないので気をつけてください、できれば登山を止めてもらえないかと言う趣旨の話である。私は霊感を感じやすいのか過去にも剣岳の小窓尾根や木曽駒の石室でも気味の悪い体験をしたことがあった。アクシデントに気味の悪いおまけまでついて朝までまんじりとせず一夜をあかす。

3月2日(日) 曇りのち晴
 雪はやんだが風が強い。ツエルトをたたんで6時10分出発、昨日のシュプールはすっかり消えラッセルでゆっくり尾根を登る。7時30分尾根が2分しているピークまで戻る。山頂稜線は未だ雲に覆われているがガスもすっかり晴れ谷を隔てて正常ルートの尾根があった。やはり手前の尾根に入っていたのだ。テレビ電波中継塔のあるピークの奥には登山口の小豆温泉の施設の屋根も見えている。携帯が使える位置に着いたので妻に電話をして今から下山する旨を伝え、警察、古賀会長にも連絡するよう話して通話を切る。さらに登ってゆくとテレビ電波中継塔のピークの直下の谷まで延びている尾根を発見、地図を読むと登山口の少し下方に下山できると判断してこの小尾根を下ることにする。シールを外して滑り下り谷に下りるところは急斜面で斜面を切ると雪崩の危険があるのでまっすぐ滑り下る。谷芯は傾斜も緩くシールでラッセルしながら地図読み通りに登山口の少し下方のR352に9時30分下山する。車のルーフには50cmの積雪があった。
 帰宅後は妻から厳しいお叱りをうけたことは書くまでも無いこと、罰として次週の山スキー禁止令を言い渡された。



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