荒島岳 雪洞新年会 厳冬期登山

  • 2013年1月13-14日
  • 荒島岳
  • 厳冬期登山
  • T(記)、U

荒島岳雪洞新年会 山行記録

25年も前から一度は登ろうと思っていた冬の荒島岳にやっと行く。思えば四半世紀もかかってしまっていた。エアリアマップ等がないのでネットで情報を収集し、地形図も画面より印刷する。便利な世の中になったものだ。長生きしてよかった。あとはGPSだけだ。

12日21時、JR摂津本山を出発し、タイ焼きを食べながら北陸道を走って福井ICを下車、約1時間で勝原スキー場跡に着いた。(24時)早速仮眠し、明日に備える(実際は未明まで会議)

翌13日、国道158線を走る車の騒音に起こされる。交通量の多い道端にテントを張ってしまったようだ。次回からは雪の林道を少し上がって静かな駐車場に張ろう。8時すぎ、装備を担いで出発。天気は快晴、気温も高く長袖シャツ1枚でも汗が出る程。登山者も多く、道はレールのようになっており、地図やコンパスを出す必要もない。スコップやワカンを背負っていることも過剰装備のようにさえ思えてくる。樹氷の美しさに感激しながら、12時30分、シャクナゲ平に到着。次第に頂上が近づいてくる。私はこの山域が初めてだったのですれ違う人々からの情報収集に精を出す。「頂上まで1時間位」、「頂上には”穴”が二つあり、そこに入れるよ」それらがガセネタだったことに気づいたのは頂上に着いてからだった。

KC3Z0036樹氷が素晴らしい

シャクナゲ平までは安全な樹林帯だが、そこから先はモチが壁の急登、上部稜線の1350mー1500m付近には偽ピークが二つあり、左側の雪庇に注意しながら登りきるとやっと頂上に着いた。(14時)

KC3Z0042

祠の横にあるという噂の”穴”を探してみると直径1.5m、深さ50Cmの風呂桶のような掘り跡が。うーん、雪洞の跡というはこれのことかいな。。

山頂付近の積雪は1mほどで雪洞は無理だったが100m程北へ下った斜面に見当をつけ、土方仕事に精を出す。2時間ほどで2人分の雪穴をほり、早速潜り込む。中は超快適。雪の冷蔵庫の中で鍋をつついて新年会を行う。明日の天気は下り坂とラジオでは言っているが、爆弾低気圧とまでは言っていない。朝一で下山するだけだし、モチが壁の急斜面以外はさしたる危険箇所もないと判断し、ひたすら新年を祝して飲む。20時就寝。風が強まってきたが雪洞内にはほとんど影響ない。

0時頃、入口に覆ったテントを押し戻すように雪が吹き溜まってきた。度外に出て雪を掻き出す。数時間で恐ろしく積もってきた。

3時頃、また雪が押し入ってきたので掻き出す。しかし雪洞内はシェルターのように暖かくて平和だ。

5時、酸欠で起床。7時出発。ここまで雪が積もると昨日まで当然のようにあったトレースも消えて、本当の山に戻っていた。これは真剣に下山せねば。

早く高度を下げたい。しかし初めての山域なのでいまいち山の形が把握できていない。どうも頂上付近は緩い台地状のようだが。

視界は100m程。昨日は考えもしなかった、地形図とコンパスによる下山となる。しかも自分の歩いた方向や距離も把握して地形図と現在位置を合わしておかなくてはならない。うーん、これは難しい。

まあ、最悪はすぐ近くに雪洞を掘ってあるのでそれに逃げ込めば2、3日は大丈夫と考える。燃料と食料もある。

一番まずいのは尾根を間違えて登り返せなくなるまで下ってしまうことだ。

と、頭ではわかっているつもりでも、右側に張り出した雪庇と空の境界線が見えず、雪庇から離れようとして左に振りぎみに降りてしまう。

しばらく下っておかしいのでまた上りかえし、やっぱり下りて、しかしなんとなくおかしいので一旦リセットするため雪洞まで戻ることにする。その途中、一瞬尾根筋が見えて、正しい方向を確認する。危ない危ない。30度程左に反れていた。雪庇の反対側は傾斜が緩いのでどの方向へも下りられてしまう。ここは雪庇と仲良くしながら下りるしかない。北へ500m程下り、そこから北西に伸びる尾根に乗らないといけないがその判断がまた難しい。急な斜面にビビリ、早めに左に逃げて尾根を下りていくとラッセルがきつく、風景にも記憶がない。

ここで相棒の最終秘密兵器スマホGPSで確認すると70mほど手前の枝尾根に乗りかけていた。危ない危ない。ここでGPSが使えなかったらどうしていただろう。

改めて文明の利器のありがたさを痛感する。しかし大山と山頂付近の稜線の雰囲気は似ているが赤テープや目印の人工物が全くない。しかも枝尾根が甘い罠を誘ってくるので吹雪くと一気にその牙を剥く。我が相棒は悪い気象条件にも拘らず落ち着いてフォローしてくれているので大変助かる。

1350m付近からは尾根も1本筋となり、所々赤テープも残っているのでコンパスを頼りに強引に下り、モチが壁も気づかないままに鞍部に下り、シャクナゲ平へと登り返す。シャクナゲ平着11時。

シャクナゲ平からは樹林帯でトレースも残っており、気楽にスピードを上げて歩く。勝原スキー場跡着13時。車は1台も停まっていなかった。福井IC手前の未来瑠(みらくる?)温泉に立ち寄り、帰神。

NOTES:

  • マムートのフロントマジックテープ止めのスパッツは脱着は便利だがラッセル最中に雪がマジックテープ部分に凍り付き、終には全部めくれて二度と現地では用を足さなくなった。やはり大きめのジッパータイプの方が安心だ。
  • 雪洞は猛吹雪にも耐えうる有難いシェルターだが、中が快適すぎて下山のタイミングを逃しやすい(自分だけか?)
  • ゾンデ棒とビーコンは割愛したが、やはり持っていくべきだった。
  • 下山後、14日の荒島岳での遭難のニュースを知る。荒天の山中では我々以外には誰とも会わなかったが??後日、荒天の中、二名でヒメマチ稜というバリエーションルートから登り、午後6時頃頂上着、下山に手間どり、頂上付近で一名が凍死されたらしいことが判明する。我々の残した雪洞を発見してもらえればよかったのだが。。
  • 冬の荒島岳は天気がよいと誰でも簡単に登れるが、天気が崩れると一気に難しくなる。本格的な技術・装備・体力がないと登れなく(降りられなく)なることがこの二日間の正反対の気象でよくわかった。是非再訪したい。