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頸城(くびき)山系

2009年7月4日(土)-5日(日)  メンバー 芝

天狗原山のチングルマ

キヌガサソウ

ハクサンコザクラ
頸城山系は、西を姫川(JR大糸線)、東を関川(JR信越本線)に挟まれた長野県と新潟県の県境の山である。最高峰は火打山2461.8mである。西から駒ケ岳、鋸岳、雨飾山、金山、焼山(活火山)、火打山、妙高山と縦走路があるが、100名山である雨飾、火打、妙高単独のアタック登山道は整備されているが、通しての縦走は玄人向きである。また、各ピークへのアタックは600m〜400mの登り返しとなる。

夜行急行「きたぐに」を利用する場合、アプローチは北アルプスより良い。雨飾は6月に登ることが出来たので、今回は金山から縦走を試みることにした。焼山が2006年12月まで登山規制されていたので金山から焼山への縦走路が一般的ではないが、縦走路を整備したとの情報もあり、慎重に行動すれば問題はないと判断した。

金山山頂

金山〜焼山のシラネアオイ

焼山山頂

火打山山頂

妙高山頂

妙高山頂のウサギギク
コースタイム

7月4日(土) 晴れのち曇り夕刻雨

大糸線南小谷(7:21)→小谷村雨飾荘(8:21/8:40)→金山登山口(9:40)→天狗原山(13:18)→金山(14:34)→富士見平TS(16:50)

天気は上々であるが、山は見えない。しかし今回は、展望よりも花を楽しむことができればと考えてきたので悲観することはない。本日は、約1,300mの登りと雪渓、根曲り竹の登山道が待っている。行きのバスは一人であったが、この時期週末に金山に誰もアタックしていないはずはないと考えていたら金山登山口には7〜8台の車が止まっていた。ここからは急登である。今回は登山靴ではなく、トレイルランニングの靴とスピード重視でピッケルではなくストックを試してみた。体調がいま一つで靴の効果はなかなか現れない。我慢である。汗を掻き掻きブナ平に到着、ここで水を4?補給した。ここの水は細い。日照りが続けばたちまち涸れそうである。

すれ違う方々はほどんど地元の方で山菜が目当てのようである。フキを採ったり、姫竹を採ったりしていた。ひたすらブナの林の沢筋の道を登る。滑りそうな道である。慎重に登るが時折耐え切れず滑る。登りなので問題はなかったが、下りたくはないルートである。やがてオオシラビソの林が現れ、続いて雪渓が顔を見せ始めると、天狗原の山頂(石の地蔵さんがある)に着く。一面のシナノキンバイ、ハクサンコザクラ、チングルマが私を迎えてくれた。ここから、金山までが雪渓の処理で一苦労した。判然としない踏み跡を辿ってなんとか金山の山頂に着いた。雪渓から水がたくさん出ていたので4?の水が馬鹿らしくなる。

ここで反省、靴が予想以上に雪渓にグリップしたので事なきを得るが、スリップした場合、ストックでは止められない。アイゼンを付けるのに1分はかからない。一人で来ているのだから、慎重を期してアイゼンは付けるべきであった。金山からの先の道は、雪渓に閉ざされて判然しない。方位を合わせて、かすかな雪渓の踏み跡を辿る。根曲り竹をつかんで雪渓を下り道を探す。やがて明らかに刈払を行った後のある道を容易に発見できた。

ここからはパラダイス、一面のシラネアオイ、ニッコウキスゲ、チングルマ、ハクサンコザクラ、アオノツガザクラ、ハクサンチドリが咲き乱れていた。これほどすごいのは初めてである。人が入らないとここまできれいに咲き乱れるのか、来て良かったと心から思った。歩行速度緩めて心行くまで花を楽しんだ。約2時間で富士見平に到着、しばらく行くと雪渓が現れ、水を得ることが出来た。登山道にテントを張っているおじさんがいたので、一人でいるのもなんかなと思いここでTSとした。雨が降り始め、急いでシラネアオイの咲く窪地にテントを張った。雨が強くなってきた。


7月5日(日) 晴れのち曇り夕刻雨

富士見平TS(5:50)→焼山(7:50)→火打山(10:43)→高谷池ヒュッテ(11:50)→黒沢池ヒュッテ(12:50)→火口原の沢(14:00)→妙高山(15:08)→燕温泉バス停(17:51)

熟睡とはいかなかったが、夜が白みかけたので無理やり起きる。おじさんはもう起きてテントをたたみ始めていた。地元の方だそうで、小千谷から来たとのこと、金山が大好きでよく来るそうである。神戸から一人で来たと言ったら驚いていた。いつもどおり、ちんたら用意をしているうちにおじさんは出発しまった。顔を出して連絡先くらい交換すれば良かったかもしれない。

ダケカンバの道を雪渓を越えて進んでいくと、砂礫地に出る。水蒸気を上げる焼山が迫ってきた。風景が一変し、月世界のように砂地と岩の世界である。慎重に標識を探す。踏み跡は確実にある。岩場を越えると焼山山頂である。イオウの匂いが強烈、ここからは約400m弱の下りである。前日の雨でぬかるんだ道に苦しめられる。トレランのシューズが笑っちゃうぐらいに滑る。ロスタイムは承知でアイゼンを付けるべきであった。高谷池から歩いてきた20人ほどの集団にすれ違う。軽そうな荷物がうらやましい。ここからは、多数の登山者にすれ違った。コルからはまた、約400m強の登り返しとなる。ハクサンチドリが多い。

汗をカキカキ影火打を越え、火打山に到着、ここからは急に道が良くなる。いままでの苦労がなんだったのかと思うぐらい。トレランシューズの本領発揮である。快適な木道を辿り、ハクサンコザクラが咲き乱れる高谷池ヒュッテに到着した。体調はまずまず予定通り妙高に足を延ばすこととした。火打のお花畑の状況を尋ねられるが、金山の方が数段素晴らしかったので、曖昧に答えておいた。妙高は典型的な二重式火山の山で外輪山を越えて雪渓を詰め、尾根筋に出て山頂を目指すことになる。ここも約400m弱の登り返しとなる。アップダウンが多く、苦しめられるが岩場が多いので、靴のききは良い。

雪渓からは一気に標高を稼ぎ、妙高山頂に出た。火打とは対照的な登山道となる。時刻は15時を回っていたので下山を急いだ。中腹での一泊を考えたが、明るいうちに内に降りられそうだなので計画どおり燕温泉に歩を進めた。途中天狗平を越えたあたりで夕立に会う。今回は濡れたくないという思いも叶わなかった。コースタイムを稼ぐことが出来たので、バスの時間に間に合いそうである。よく整備された道を下り、あっけなく燕温泉バス停に到着した。バスの時間に間に合ったので風呂は町で入ることにして即座に出発した。泊まりはテント、足は全て公共交通機関利用、帰りも経費節約で直江津に出て夜行で帰神、セコイ、公務員のようである。

「ちょっと考えたこと!!」

一人で山に登っても本当の強さは身に付かない。もちろん、一人で登る以上は、それに伴うリスクは自己責任で背負わなければならず、計画を成功させればそれなりに自分自身の成長につながるが、思考の大部分が自分のことを考えるところでパティーには及ばない。本当の強さとは自分のことを考えると同時にメンバーのことも考えられる強さであると思う。引っ張るところは引っ張り、支えるところは支える。メンバーはその強さにあこがれ、迷惑をかけまいと努力する。いつしか体力と実力がついてくれば阿吽の呼吸で、支え合うことができ、一人の力が数倍の力になる。

そこまで書けば、パーティで登ればええやんと思われるかもしれないが、パーティで目指す山登り、特に登攀力が私には無い。特に雪の実力は全くと言っていいかもしれない。性格的なものだろう登る前に、ルートに圧倒される。山に登る前に山に呑まれてしまうのだ。体力が下降線をたどり始めるころこれを確信した。

幸い大きな事故に発展しなかったが、それは強さを持った仲間に支えられたからだろう。感謝しなければならない。それでも山は止めれず、単純にテントを背負って歩くという行為に戻った。これがなかなか楽しくて、昔、勉強したことを思い出しながらちょこちょこ登るようになった。地図を広げては面白そうだな思うルートを、ネットで調べ、少しずつ花の名前や樹木の名前が分かるようになってきた。

ハイカーが行くには、少し困難、登攀者にはもの足らないと思われるルートが多く、暇が取れるのがぎりぎりになることも重なっていつしか一人で登ることが多くなっていった。しかし、登るときには意識しておきたい。自分のことを考えると同時に回り(たいていは自然であるが)ことも考えるようにすることを、今回の反省点ももう少し自然のことを思考する余裕があれば、より確実に行動することができたであろう。そして、下界において社会に出ても、山で学んだ本当の強さを忘れずにいたいものだ。
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