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冬山合宿 五竜岳遠見尾根  2008年 12月27日〜12月30日

L 須川(雄)SL吉田 野上 岩瀬 森 宮島       記録:須川

今回の冬山合宿は、例年になく合宿らしい合宿になったと思う。というのも、秋の五竜岳遠見尾根の偵察に始まり、ロックガーデンでのITT・菊水山〜摩耶山の重荷・六甲全山縦走・蓬莱峡でのRCC・菊水ルンゼでのITT・装備点検・買い出しなど、ほぼ毎週メンバーの誰かが集まり練習や準備を行うことができた。また事前に役務を分担し、宮島君には天気図が書けるようになること、森君には共同装備の点検と補修・食当としてペミカンを作ることを練習してもらった。

さらに、最新の登山道具を色々試せた。@今回の目玉はGPSで誤差が5mほどしかなく、ほぼ正確な現在地を表示できる。遠見尾根は尾根が顕著なので迷いにくいが、八方尾根などで視界が悪くなればかなり威力を発揮すると思う。A以前吹雪の中でロープを出したときのコーリングが聞こえず往生したので、ビレイ時のコーリングを無線機で行うことにした。B雪崩対策として、方角と距離が出るビーコンでの捜索訓練を蓬莱峡で行った。ゾンデ棒とビーコンとスコップは今の冬山登山では常識らしい。Cまた食事の際に、傷んだ筋肉をすばやく回復し筋肉痛などを防ぐ効果が期待できるアミノ酸サプリメントを積極的に摂取した。D気象の予測は、1ヶ月前から地上天気図と高層天気図をスクラップして日本海側の天気の特徴を調べた。Eメンバー間のやり取りをEメールで行うことにより、時間を気にせずに頻繁かつ念蜜に情報を交換することができた。

12月28日
新神戸から五竜とおみスキー場まで6400円で夜行バスが出ている。電車の約半額の値段で、リフト乗り場のすぐ近くまで送ってくれるのでお勧めだ。バスが朝の6時にエスカルプラザに到着したので、8時15分始発のテレキャビン運行までしばし待つ。

25日からの強烈な寒波で外は大雪。スキー場は嬉しいだろうが昨年の冬合宿も天気が悪く敗退したのでこの天気が恨めしい。週間天気予報では25日〜2日まで冬型の気圧配置が続き日本海側の天気が悪いらしい。

テレキャビンの駅に長野県警山岳警備隊の方が居られたので登山計画書を提出し、情報を教えてもらう。遠見尾根は、24日に学生が入ったのみで28日入山は単独の人と僕らのパーティーだけのようだ。スキー場上部の第一ペアリフトが悪天で止まっていたので、スキー場の端を歩き地蔵の頭を目指す。若いスノーボードのお客さんが多く、非常に場違いで恥ずかしい。

地蔵の頭からはトレースもなくワカンを履きGPSを確認し赤布をつけながら進む。地蔵の頭周辺は広く迷いやすい。雪が降り続ける中、腰までのラッセルに苦しんでいたら、単独の人に追い越されてしまう。先頭を交代しようとピッチを上げるも全然追いつけない、足元を見ればスノーシューズを履いている。スノーシューズの後をワカンで歩いても結構潜ってしまう。いつまでも前を行ってもらうのも悪いのでザックを置いて空身でラッセルして先頭を歩くが、結局抜かされて追いつけなかった。

冬の全装備(30kg弱)を背負ってのラッセルはきつい。もっと重荷訓練をしておくべきだった。冬の後立山に入るならスノーシューズを持っていくが有効だと思う。時折風が強く、目を開けていられない時もある。今日は小遠見を過ぎた所までしか行けず、ここで幕営とする。

遠見尾根の快適なテントサイトは小遠見を下りたところ・大遠見周辺・西遠見の手前の3箇所である。整地しキチンとしたブロックを積んでダンロップの6テンと荷物用の2テンを張る。風で飛ばされないように何箇所もテントを紐で固定する。テントに入り明日の天気図を取る、宮島君にに気象係をしてもらったが短期間でちゃんと天気図が書けるようになっており感心した。強い冬型の気圧配置で明日も悪いだろうと予測する。最近はインターネットで3日後位までの予想天気図を見ることが出来る。下山してから新聞の天気図と照らし合わせてみたらほとんど同じだった。実況天気図からこの先どう動くかを予測するのは難しいが、予想天気図からだと予測しやすいのでこれからも利用したい。

冬山では6テンで6人は狭い。座っている間は大丈夫だが、寝るときは荷物を出さなければ横になれない。雪が降り続けているのでテントの両側から雪が押してきて更に狭くなる。夜中の1時半頃、端で寝ていた森君が「テントがつぶれそう」というので 出てみるとテントの3分の2は埋まっていた。荷物用テントは、全て埋まっておりこのテントで寝ていれば酸欠になっていたかもしれない。急いで掘り出すが、風が強く風上に対して向いていれない。風が弱くなるのを見計らって掘りだす。テントが潰れないだろうか、明日のラッセルはどうだろうかなど不安の中で眠る。

12月29日
 朝起きて、テントの除雪をする。昨日と一転して雪は降っていない。明るくなり視界も良好だ。身支度して出発しようとするが、テントが飛ばないように打ち込んでいた宮島君のピッケルが見つからない。記憶も曖昧で「確かこの辺に埋めたと思う」という程度で昨晩からの大雪ですっかり埋まってしまった場所から探すも見つからない。森君のピッケルもテントの横に挿していたらしいが雪で隠れてしまい見つからない。このピッケル達を探し出すのにかなりの時間をロスしてしまった。森君のピッケルを挿した場所を覚えていないのは言語道断だが、ピッケルをテントのどの場所に挿したかも覚えてなければいけない。

 今日は、昨日がウソのように天気が良い。五竜岳・鹿島槍ヶ岳・爺ヶ岳・白馬岳まで後立山連峰が見渡せる。前方にそびえる五竜岳へと続く白岳は急な雪壁で迫力がある。西遠見を目指して歩き始める。今日は、後続のパーティーが空身でアタックをかけたのでトレースもあり快適だ。しかし今日入山してきたパーティーに抜かれるなど、歩くスピードが遅い。冬の豪雪後立山に入るならどれだけ厳しいラッセルでも耐えうる重荷力をつけてから入りたいものだ。

白岳が目前に見えるが下部の傾斜がきつく雪崩れそうだ。トレースも無く雪がタップリ載っていてかなり悪そう。尾根が不明瞭な上に、かなりの急斜面で周りに木などアンカーに使えそうなものも無く降雪時には雪崩れそうだ。天気が悪く視界が悪ければ左左に行ってしまいそうでルートファインディングも難しいだろう。五竜岳のピークだけを踏みたいのなら遠見尾根よりも八方尾根からアタックしたほうが簡単だと思う。

 アタックに行ったパーティーが引き返してきたので状況を聞くと「クラストした雪の上に新雪がのっていてとても登れる状態でない」と言っていた。今日は西遠見岳のすぐ手前で幕営し明日、五竜岳までアタックすることにする。天気図は再び冬型になりつつあり、消灯した位から風が出てきて雪も降ってきた。

12月30日
4時に起きて外を見るとガスが出て視界も悪く、トレースも消えている。このあと31日には大寒波が来ると予想されており、白岳を登りきる自信が無かったので泣く泣く敗退することにする。この数ヶ月間五竜岳登頂を目指してがんばってきたのに悔しい。たとえ今日停滞しても今後、数日間は強い冬型の気圧配置になり天気が悪くなる予想だ。心苦しいがここでの敗退は妥当な判断だと思う。ただ、ひとつ心残りなのは下山に時間がかかると思い、白岳まで行かずにすぐに下りてしまったことだ。自分の目で弱層テストをして判断するべきだった。

下山は、トレースは消えているが所々で前日のトレース後に乗ることが出来たので思いのほか早く下りることが出来た。GPSは、来た道が画面の地図上で表示されるので帰りは迷うことが無い。地蔵の頭の手前で余った食料を食べ、賑わうスキー場を細々と横断してエスカルプラザまで下る。

エスカルプラザからシャトルバスでJR大糸線の神城駅まで行き、各駅停車で松本まで。松本から「特急しなの」で名古屋まで出て、新幹線で新神戸まで帰る。松本からは電車の便も多く早い。運賃は片道12000円位、新幹線に乗ると言うと特急料金が少し安くなるみたいだ。今回の山行は、登頂こそ出来なかったが準備期間を含めると充実した山行となった。特に森君と宮島君は、良い経験となったと思う。様々な面でサポートして下さった野上さん、吉田さん、岩瀬君には、深く感謝します。また一緒に行きましょう。


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