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台高 迷岳     2005年11月13日 橘(単独)


 本来なら土曜の朝から弥山川から八経岳に登る予定だったが、土曜日に急遽仕事となったため前夜発日帰りで帰れる山に変更する。

 迷岳。うーん名前からして曰くの有りそうな山だ。最近自分の人生にも迷いが生じてきた。ここは一発、迷岳に行って、さらに迷ってみよう、そんな気がして前夜の夜、簡単なコース説明を奥さんにしてから、夜10時出発する。吉野着12時。高見山へは行ったことがなくしばしば地図で確認しながらようやく蓮ダム手前のスメールホテルに到着は翌1時30分だった。途中で鹿を轢きかけて慌てた。なかなか遠い所だ。
 駐車場に車を止めてさあビールと日本酒で一人で宴会でもと思ったが睡魔には勝てずそそくさと寝袋に潜り込む。朝まで同じ体勢で寝ていた。

 6時過ぎ寒さで目が覚めるがまだ寝たらんともう一丁寝袋を重ねて寝なおす。次に目が覚めると7時だった。慌てて起きて、車の横で茶を沸かしていると登山者が二組三名やってきた。同じ迷岳を登るようだ。
 自分も早く支度をせねばと思うがのんびりしたいという気持ちもあり、ゆっくり慌てながらザックに荷物を詰めたり、日本茶を飲みながらパンをかじったりする。ようやく準備も出来て唐谷川左岸に付けられた登山道へと足を踏み入れる。

 入り口に登山届ポストがあり、コース予定と住所氏名、車の名前など記入する。入り口にポストがあるということは過去、何度か事故が起きたということだろう。気合を入れて歩く。 15分ほどで谷から尾根道に上がる。赤テープは5m間隔くらいであり、それほど迷いそうな地形でもない。しかし、登りが超急登だ。しかも尾根が痩せていて、お助けロープもほとんどなく、雪彦の登山道とロックガーデンを足して2で割って1.5倍したような難しさだ。
 
 早々に新兵器の伸び縮み杖をザックに格納する。これはえらい上級ルートに来てしまった。しかし素人登山家の私が上級と感じるということは実は中級の山ではなかろうかという気がする。登りでびびるということは同じ所をロープもなしで転んだら100mは転落しそうな勾配を下山するほうがかなり危険そうだ。一般のハイカーにとってはこの切れ落ちたがけ下りはどう見ても危険だ。帰りは布引沢を下降する予定だが急峻な沢を30mザイルで一人で懸垂しながら降りれるのかと考えながら歩く。

 途中道を間違えたがその先に上から落としたのか伸縮ステッキが引掛かっているのを発見し絶壁に匍匐前進しながら自分の杖を一杯に伸ばして命がけで拾い上げる。こういう落し物を拾うときの集中力はたいしたものだと我ながら感心する。杖も拾え、気を良くしてからなおも進むとようやくやせてはいるがあまり高度感にびびらずに行ける地形になって来た。

 2時間ほどで飯盛山に到着。尾根上の小ピークといった感じだ。残りは前半の急登がうそのような穏やかな尾根になり歩く速度も上がってきた。1時間ほどで先行2組に追いつきホッとする。(緊張する山では同行者に出会うとホッとする)早速情報交換すると一人は60過ぎの男性でかなりへばっている。もう一組は経験のありそうなアベックで迷岳は10年振り二度とのこと。下山路の布引岳の状況を聞くと落差110mの布引滝があり、そこの通過はかなり危険で以前引き返したことがあるとの事。

 うーんこれはやばそうだ。とりあえず山頂へついてからたらじっくり考えよう。そうこうするうち、ひょっこりと穏やかな頂上に出た。
(ここまで3時間20分位) アベックは稜線をこのまま進むとのこと、又へばっているおじさんは唐谷林道へと続くもっとも安全な下降ルートを選ぶとのこと。私はとりあえず行けるところまで布引沢を降りてみることにする。

 11時30分、下山開始。秋の陽は短い。陽のあるうちに危険な所は抜けてしまいたい。注意深く降りながら、左側についているはずの布引沢へ降りる目印を探す。20分ほど降りて朽ちかけた木片に「難路布引沢下山路」と書いてあるのを見つける。難路でも下山路とあるからには人跡未踏の荒れ沢ではないのであろう。まだしっかりと赤テープがあり、退却路確認にしばしば後ろを振り返りながら降りていく。

 飯場跡を通過して1時間ほどで布引沢に降り立つ。下りたところがちょうど落差110mの布引滝の落ち口で空を飛ぶ以外に降りれそうにもない。文献には右岸を巻いて降りるとあるがこんなところを降りるのは無理だ。しかもキャラバンのトレッキングシューズが沢のぬめぬめに相性が悪く立っているだけで精一杯だ。

 これは無理だ引き返そう。そう決めて、最高に美しい周りの紅葉を瞼に焼き付けておく。しかし来る途中なんとなく巻き道らしい斜面があった。帰り道でそれを確認しよう。少し戻り、その巻き道らしき所を少し降りるとしばらくして赤テープが出てきた。おお、これか、よしよし。ゼロバンも着けかけたが残置のロープがあり体重をかけても大丈夫そうだ。 ロープをつかんで降りるとまたロープがあり、それらを利用してやっとのことで布引滝を巻き終える。残置ロープがなければ自分でロープを張らないとちょっと危なそうな所だ。

 途中何度か赤テープを見失いながらまた拾い上げ、次第に木こり道となって来た。近く遠くでチェーンソーのうなり声も聞こえる。叫べば聞こえそうな距離だ。 ひたすら谷と同じ方向に下り、道もしっかりして来る。ここまで降りればもう安心という所でコーヒーを煎れて大休止とする。適度な緊張と見事な紅葉の中でああもう一泊でもできたらなあと思う。そしてまた重い腰を上げしっかり付いた木こり道を走って降り、蓮ダムへは3時前に到着、車へ3時半到着した。そしてスメール温泉で汗を流して4時半、現実の待つ家へと出発した。

NOTES
 迷岳は尾根道の前半1/3が急峻で、子供づれやハイカーには危険な山だ。
 今回は降りなかったが降りるときのほうがはるかに危なそうだ。
 (後ろ向き3点支持が必要)
 地形図とガイドブック「アルペンガイド大峰・台高」(山渓社)のコピーを
 持参したがアルペンガイドの記述は的確でこれにより3割は判断に迷う
 時間を短縮することができた。
 次回は厳冬期にアイゼンで登ってみたい。結構しばかれることとと思う。



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