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大台ケ原 小栃川又剣谷     
      平成8年(1996年)5月25日〜26日 青谷 晋行

 メンバー 青谷 山本 高島
コースタイム 5月24日 夜2200伊丹発(青谷号)   
5月25日
又剣谷出合手前の林道 0020着 0800発〜2つ目のゴルジュ上部  1200着〜小廊下手前 1300着 テント泊 
5月26日 0500発〜稜線の林道 0600着〜又剣谷出合 1200着 帰神

 久しぶりの沢登りだ。新人の高島君も加わり、沢の鉄人山ちゃんもいつも以上に張り切っている。ものすごく川の流れが美しい。車をあとに、張り切り3人組が喜びいさんでジャブジャブと、川の中へ入っていく。あ〜冷たい。水は少ないが、まるでアルプスの雪解け水のように冷たく感じる。でも、山の緑も空気も心も、水面から上部はすべて初夏の陽気だ。とてもあったかい。3人とも何かに浮かれているかのようだ。だが、まさか帰りももときた沢を、下って帰るとは、この時誰一人として、知る由もなかった。風折谷からすぐに又剣谷へと入っていく。

 最初すべり谷のような流れの小滝を右側からへつる。続くいくつかのナメ滝を水は冷たいがポコポコ越えてゆく。やがて、一つ目のゴルジュにさしかかる。ここは左から巻き、最後の30Mの滝を快適に直登する。また、小滝が連続する。途中りんたろうが落ちているのを3人が発見する。この時もまさか、帰りも同じりんたろうを発見するとは、誰も知る由もなかったのであった。別に気にせず、どんどん進む。木もれ陽が沢のせせらぎをライトアップさせている。とても美しい。さて、核心であろう大ゴルジュにさしかかる。張り切り一番の私が、これまた張り切ってリードする。15Mの滝は左側からトラバース気味に出口を目指す。高度感は抜群だ。出口のトラバースが少しいやらしく感じた。途中、古いハーケンがあるが、ナッツ類の方が有効だろう。抜けたあと支点を取る適当な岩がなく、お守りに持っていったラープを細いリスに打つ。これがよく効いてくれる。とても重宝した。

 このあとはそれは美しいナメが続く。もうすぐこの谷の上部にさしかかろうとしている。このまま行くと十分本日中には終わってしまいそうだ。翌日も天気のいいところから、たき火がしたく、小廊下手前にて、ツエルトを張り、早くも宴会準備にかかる。何と言っても、山ちゃんのかみさんに用意していただいた特上牛肉入りのカレーがめちゃうまかった。早々から火をたいていたので夕暮れ時にはすでに大火となっていた。沢のせせらぎに耳をまかせながら、遅くまで火を囲んでいた。

 早朝、せせらぎで目を覚ます。夜明けと共に出発だ。朝飯前のように、最初の小滝を越え、二俣を左にとり、連続するナメ滝をかたっぱしから越えてゆくと、水が涸れ、ルンゼ状のガラ場となり、これを
つめたら竜口尾根の稜線だなと思った時だ、な、なんと目の前にはそれは新しいコンクリートの城壁が大きく立ちはだかるようにして、ルンゼをふさいでいるではないか。3人一同びっくり。とりあえずよ
じ登ると、できたばかりのような新しい林道に躍り出る。 手元の地形図にもこのような新しい林道は載っていない。荒谷峠へ抜ける尾根を下る予定だったので、この林道を使いしばらく歩くことにする。

 やがて目的の尾根にきたので下り始める。途中から踏みあとがなくなり、ブッシュとなる。うっとうしいのですぐ隣の沢を下りることにする。地図ではほとんど滝もないようだ。ところがどっこい。そうは問屋は降ろさぬものか、という具合で、出てくる出てくる大きな滝が。再び一同びっくり。見通しを立て、悪いところは巻き、懸垂で降りる。そして、途中またびっくり。何と昨日登った時にあったあのりんたろうが、落ちているではないか。でも、ま、釣りする人もたくさんおるやろし、別に珍しいことでもないやろという具合で、気に留めることなくどんどん下ってゆくのであった。下に行くにつれて大滝は少なくなり、小滝やナメ滝も多くなり、すべり台のごとくみんな遊び始める。この谷はどの谷なのだろうという疑問さえ、すでにどこかに行ってしまっているようだ。あっという間に大きな二俣が、そして、な、なんと、その後方には昨日と同じ林道があるではないか。一瞬、3人とも沈黙した。と、次の瞬間、みんなおなかを抱えて笑いころげるのであった。そこからすぐに残置してあった青谷号も、僕たちを見て大笑いしているかのようであった。いやあ、参りましたわ、ほんま。はずかしいけど、楽しい沢登りでした。地図だけは最新のものを持っていくように!と自分に言い聞かせての帰り道でした。終わり。




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