Ama Dablam 冬期アルパインクライミング

山行日
-
山域、ルート
Ama Dablam
活動内容
冬期アルパインクライミング
メンバー
吉澤

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4年前、剱岳で出会った友人にある山に誘われました。アマダブラム、ネパールのヒマラヤにある6856mの山で、垂壁の登攀があるため、クライミング の技術が必要で、エベレストより難易度は高いと記述される事もあります。

まず休みが取れないだろう、それに家族も許してくれないだろう。そもそもクライミング初心者の自分にそんな危険な山が登れるのか?

行けない理由はいくらでもありました。

でも何故か心に引っかかる、本当に行く事は不可能なんだろうか?調べる程にアマダブラムの姿に魅了されていき、この山は自分の人生の中で登らなくはいけない山だという気がしてきました。

アマダブラムを登る為には何をしたら良いか。会社への休暇申請、嫁さんの許可、遠征費の貯金、信頼できるガイドへの依頼、技術的なトレーニング、低酸素に対応する為のトレーニング、高所登山に必要なギヤの準備。

一つ一つクリアしていく事で、夢が現実味を帯びてきた矢先に、コロナが始まり2年間渡航すら出来ない状態となります。

そして私をその気にさせた友人は子供が産まれて呆気なくアマダブラムを諦めてしまい、私はソロで行く決断をします。

しかし私が幸運だったのは、山本美雪さんというエベレスト、ローツェ、マナスルを登頂しアマダブラムも登った事のある方が近くにいて、アドバイスを貰えた事と、優秀なガイド、Ashish Gurungを紹介してもらえた事でした。

そして私と同じように2年間コロナのせいでアマダブラムに登れなかった、手塚慧介君と、ネパールで日本語教師をしていた、清水玲子さんに出逢えた事です。

その出会いがなかったら、僕はアマダブラムに登頂出来ていなかったかもしれません。

色々な人との出会い、そして周りの人から沢山の応援をいただいたおかげでネパールに行く事ができました。

ネパールへの渡航期間は34日間、高度順応のため、ゴーキョリ、ロブチェ、ポカルデ、アイランドピークに登り、アマダブラムはワンプッシュで4日間で登頂でき、前後レストとプジャ(祈祷)の日も合わせベースのロッジの滞在が7日間でした。

前置きが長くなりましたが、以下山行記録です。

Ama Dablam 冬期アルパインクライミングの山行記録

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装備及び使用ギヤ

前後ダウンスーツ(ヒマラヤンパーカー)
ハードシェル(コズミックパーカ)
ソフトシェル(ライトシェルパーカ)
インナー(トレールアクションパーカ)
高所登山靴(G2 SM)
アイゼン(バサック)
グローブ(ソロイスト)
サブグローブ(テムレス)
シェラフ(オーロラ)
スリーピングマット(アルパインパッド)
リュックサック(バリアント37)
ハーネス(クーロワール)
アッセンダー
セルフ用ロープ 10mm5m
管付きビナ2枚
アイススクリュー17cm一本
スリング60.120 各一
ゴーグル
サングラス
ヘルメット
ヘッドライト

ダウンスーツ、高所登山靴以外のほとんどのギヤが日本の雪山に行く時と同じで問題ありませんでした。色々無駄な物も持って行きましたが、一番助かったのはのど飴と龍角散ダイレクトで、乾燥していて砂埃も多い為、喉のケアが常に必要でした。

ガイド

リーダー Ashish Gurung
Sujan Gurung
Mandip Gurung
Dipan Gurung

ポーター

Rajin 、Rabik 、Summan、Lakshimi

今回若手ガイドの経験の為という事で日本人3人に対して4人のガイドがついてくれました。

それ以外にもポーターが2~3人ついてくれ30~40kgはある我々の装備を担いでくれました。彼ら無しではこのエクスペディションの成功はあり得なく、感謝の気持ちしかありません。

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11/16 pangboche 3930m

パンボチェよりアマダブラムベースのロッジへ。アマダブラムBCへトレッキング

今回宿泊はロッジで快適でしたが、ベースキャンプも一つの村のようになっていて楽しそうでした。

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11/17 BC4600m

レスト日 アマダブラムロッジにてプジャ。

パンボチェのラマ(僧侶)にきてもらい安全祈願。想像していたよりも本格的で、午前中いっぱいくらいお経をあげていただきました。

午後からは緊急時の為の、酸素ボンベ使い方レクチャー。結局誰も使用せずに済みましたが、重たいのに持って上がってくれたガイドに感謝です。

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11/18 camp1 5795m

アマダブラムロッジよりキャンプ1へ

キャンプ1直下はガレた岩場ですが、それ以外は危険箇所は特にありません。比較的安定しているがキャンプ1も岩場に無理矢理作ったテン場の為、マットを敷いても大きな岩の突起が気になり熟睡できませんでした。

日本でのテント泊と同じように90cmのスリーピングマットと同じ長さのエアマットしか持っていかなかったのですが。ヒマラヤにはせめて150cmのフォームマットにすれば良かったと後悔です。

そして目の前に広がるアマダブラムの大パノラマでテンション上がって眠れないので、今回あまり活躍していないGoProのナイトラプラスで夜のアマダブラムを撮影しました。

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11/19 camp2 5980m

キャンプ1からキャンプ2へ

いよいよゴジラの背のような岩場を歩き、難所のイエロータワーへ。基本フィックスロープが張られている為、安全は確保されているのですが、切れかけているヤツもあるので一番信頼できそうなロープにアッセンダーをかけて登っていきます。

イエロータワーはフリーなら5.9くらいかと思いますが、高所登山靴をはいてグローブしていたらなかなか難しく、核心はアッセンダーを腕力で上げて抜けてしまいました。

それ以外の箇所は穂高や剱岳の鎖場とそんなに変わらない感じで高度感はありますが、ちゃんと探せばホールドもあるし足場もあります。

キャンプ2はほとんど平らな場所がなく、テントの1/4くらいは宙に浮いている状態。

スペースがないので仕方無いのですか、排泄物の匂いも酷く、心休まる場所とは言えませんでした。

この日の為に買い揃えたダウンスーツを着込み、夜の出発に備えて仮眠します。

Ama Dablam 冬期アルパインクライミング IMG_7812Ama Dablam 冬期アルパインクライミング IMG_7897Ama Dablam 冬期アルパインクライミング IMG_7722Ama Dablam 冬期アルパインクライミング IMG_7793

11/20
summit day 6856m

キャンプ2~キャンプ3~サミット~キャンプ1へ

前日の22:00頃アイゼンを装着してキャンプ2を出発。暗くてあまり印象に残らなかったのですが、グレートクーロワールとマッシュルームリッジという難所も一歩ずつ確実に進んでいき、問題なく通過できました。

しかしロブチエ、アイランドピークでは感じなかった身体の倦怠感、前日あまりうまく眠れなかったせいもあり足取りも重く、眠い。そしてなんだか頭が痛く吐き気も少しする。これが高度障害か?

キャンプ3に、1:00頃辿り着き、風も強かった為3時間程待機。熟睡はできませんでさたが、身体を横に出来ただけでも少し体力を回復出来たと思います。

4:00頃、あまり風は弱まってはいないけれど再出発。風が強く寒い。ダウンスーツの下に薄いダウンパンツを履いて来なかった事を後悔。そして気分の悪さが改善した代わりに今度は睡魔が襲ってくる。5歩進む度に息を整える為に立ち止まらなくてはいけず、立ち止まると寝てしまいそうになる。

深呼吸を意識して積極的に酸素を吸い込んでも10歩も進めない。

ガイドのスーザンにピークはまだ?と3回目くらいに聞いた時、最後の緩い雪稜を登っている所でした。

6:45アマダブラムサミット

ピークに目印的な建造物はなく、雪に埋もれかけているタルチョが唯一の印で、そこまで登ってくると倒れ混み10分くらい寝てしまった。感動の前に疲労がピークに達し涙は出てきませんでした。

僕が起き上がるのを待っててくれたスーザンと抱き合い、写真を撮ったけれど、全然実感が湧かない。30分くらい待つとチームのメンバーが続々と上がって来て、健闘を讃えあいました。

今回初めてアマダブラムに登頂したマンディップの涙を見てようやく凍ってしまった僕の感情も溶けてきて目頭が熱くなる。

山頂には1時間くらいいて、GoProでもっと沢山の写真や動画を撮りたかったのですが、寒さと疲労でバッテリーを交換するのもめんどうで、少ししか撮影できませんでした。

下りはひたすらフィックスロープを懸垂下降。傾斜の緩い所はシェルパズラッペルというカラビナ2枚をぎゅっと握って抵抗をつくる下降方法で下山します。

疲れているけれど、ここにゆっくり休める場所はない為、早く降りなくてはいけません。

キャンプ2まで降りて来た時はよっぽど寝てしまいたかったのですが、ここにも食糧はデボしていない為、予備体力を完全に使い切ってキャンプ1へ。

陽が沈む前に辿り着きましたが、その日の行動時間は18時間にもなりました。

ネパールに来る前に、大峰奥崖道を寝ないで歩いたおかげで耐えられたかもしれません、大さんありがとう。

長い長い1日だった。アルファ米を流し込み熟睡。多少背中痛くても本当に疲れていたら眠れるものです。

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11/21キャンプ1よりベースロッジへ

C1から1時間もあるけば岩稜帯も終わり、歩き安い登山道に、ビクトリーロードです。

ロッジに着いたら早速サミットのお祝い。

サウニーが出してくれるヤクのステーキやチキンのチリソース炒めのような料理、どれも勝利の味がして美味しかった。

浴びるほど飲もうと思っていたビールは、胃が疲れているのかそんなに飲めず、念願のククリラムをゆっくりいただきました。

アルコールが入ると自然にダンスがはじまります、音楽に合わせてストーブの周りを延々と踊り歩く。山頂に立った時は感じなかった感情が溢れ出し、自然と涙がぼろぼろ出てくる。

達成感というは絶景を前にして感じるものじゃなく、暖かいストーブの前でビールを飲みながら感じる物のようです。

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11/22 は1日レストし11/23下山開始

帰り道は高度を落として行くだけだからあっという間です。

予定していた5ピークの登山以外でも、ルクラやナムチェの街並みを歩くのはとても楽しかったし、エヴェレスト街道は非常に綺麗に整備されていて、ヒマラヤの高峰を沢山見る事もできたのでトレッキングだけでも十分に楽しむ事が出来るなと思いました。

毎日食べたダルバートも場所によって、おかずのタルカリにも個性があり、ダルスープの味も違っていて面白かったです。

そして今回記録には書けなかったのですが旅の途中までネパール人のRashila、Tilasha、Parshadとも一緒にトレッキングや登山をする事が出来て、色々な事を学ばせてもらいました。

初めてのネパールでこんなにもサティ(友達)が出来て本当にラッキーだったと思います。

次に来る時はもう少しネパール語を勉強していけば、もっとコミュニケーションが楽しめるのかなと思います。

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さぁ次はどの山に登ろうかな?カッコいい山を沢山見過ぎて、なかなか次の目標が定まりませんが、また面白い事したいと思います。

長い文章を最後まで読んでいただきありがとうございました!