剱岳 バックカントリー、山スキー

山行日
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山域、ルート
剱岳
活動内容
バックカントリー、山スキー
メンバー
藤本 (L)(記) スキー、N (会外友人) スキー、T (会外友人) スノーボード

剱岳 バックカントリー、山スキーの山行記録

今シーズン最後の山スキーに、

「剱岳 大脱走ルンゼ」を滑ってきた

この場所に行こうと誰が言い出したのか、
どうやら私みたい ...

「身のほど知らず」とは正に私の事

行くとなれば当然、色々と調べる
どうやら山スキーヤーにとっては一つの目標であり
チャレンジ精神を掻き立てられる
「憧れの崇高なルート」

「岩と雪の殿堂 剱岳」

北アルプスの盟峰 剱岳 (2,999m) の南面を山頂から
平蔵谷まで綺麗に貫く急峻なダイレクトルンゼ
斜度は平均45度、「最大50度」と言われる
ミスの許されない クラシックライン
黒々と岩稜を露出した威風堂々とした山容は
威圧感が凄い

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想像するだけで心臓の鼓動が速くなる

いくら準備しても不安が拭えない

以下、山行記録です


装備 (主な物)

山スキー 標準装備

登攀具
アックス × 1本
ウィペット × 1本
ポール × 1本
アイゼン 
ハーネス
PAS
スリング (400cm、240cm、120cm)
無線

行動詳細

1日目 (5月17日)

7:00 立山駅 
8:30 室堂
11:00 剱御前小舎 (泊) (2,750m)

急ぐ理由はないが始発のケーブルカーに乗る
美女平からのバスに揺られながらいつかのワンデイ

「立山駅 ~ 雄山 山スキー 50km」を想出す

果てしなく遠かったな

室堂は予報通りの曇天
これまた急ぐ理由はないが剱御前小舎まで
競う様にハイスピードで上がる

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小屋に着き初めて稜線の反対側の剱岳を望めた
肉眼で見ても「大脱走ルンゼ」はぶっ立ってる!

「ここまで来てしまった ... 」

更に望遠カメラでラインを念入りにチェック
核心部のノドに破断面があるが判断がつかない

気温はさほど低くはないが雪は硬め

「時間があれば別山北面の急斜面を滑るべき」

と某書籍に書かれている通り若者のT氏は滑りに
行き「おかわり」までしたとか

我々おじさん組は色んな理由をつけ意地でも外に
出て行かない (笑)
そして会議!

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「美しい ~」

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富山の水田に夕日が朱色に染まり綺麗

4月下旬から5月の中旬までしか見れないらしい

「砺波平野の散居村」

散居村とは家一軒一軒が広大な耕地を挟んで点在
している集落形態で、日本では他に十勝平野や
出雲平野などでも見る事ができるが、とりわけ
砺波平野の散居村は日本最大級の規模を誇る

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そんな絶景の撮影も若者にまかせる (笑)

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2日目 (5月18日)

快晴

3:00 起床
4:30 剱御前小舎 (2,750m)
4:43 日の出
    剱沢 滑降
5:30 平蔵谷出合 (2,100m)
    インデアンクーロワール
    源次郎尾根
9:30 剱岳山頂 (2,999m)
10:30 滑降開始
11:30 平蔵谷出合 (2,100m)
12:00 剱沢 登り返し
14:00 剱御前小舎 (2,750m)
15:30 室堂 (2,430m)
16:30 最終バス
18:00 立山駅 (駐車地)

眠さと緊張感が入り交じり皆、口数が少ない

薄暗い中、カチカチの剱沢を平蔵谷出合まで滑る
快適とはまず言えない雪
すぐさま太ももに乳酸が溜まりストップ

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「どんどん近づいてくる」
「圧倒されてきた ... 」

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立山の名ガイドとして活躍した「佐伯平蔵」

なかなかな風貌の男

「平蔵谷」の名を残している

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平蔵谷出合 到着

天気は申し分ないが、まだまだ雪は硬い
雪が緩まなければ流石に「大脱走ルンゼ」は
滑れない
帰りの最終バスの時間を意識しながらギリギリまで
雪が緩む時間をかせぎ山頂からのドロップ時間を
調整する
内心、コンディションが揃わない事を願ってる
自分がいた ...

右側の岩壁からの落石に注意しながら中央~
左寄りを登る

下部はデブリと落石が多い

前を行く3人パーティ
(全員、BCガイドでプライベート山行とか)
インデアンクーロワール出合近くまで進んでいる

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青と白のコントラストが眩しい

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山スキーヤーの2人が頼もしく見える
ビビってるのは私だけか?

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右手に見える天狗の鼻の様な顕著な岩峰を挟み

左が 「大脱走ルンゼ」
右が 「インデアンクーロワール」

どちらからでも登れる

またそれ以外にも平蔵谷を詰めれば
「えびルンゼ」や 平蔵のコルから
「カニのタテバイ」もある

今回は「大脱走ルンゼ」の斜度をまじかに見て
滑降のイメージをしたいのと雪質のチェックが
したかったので「インデアンクーロワール」から
登る事とした

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「大脱走ルンゼ」直下の破断面
深さ3mほどはありそう
絶対落ちるのはNG

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「大脱走ルンゼ」の核心部のノド直下を偵察
壁の様にそそり立つ
雪は?がっているのかは不明
クライムダウンするにしても滑走からアックスと
アイゼンにモードチェンジできる場所があるのか?

もし出来なければ詰んでしまう ...

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上を見上げればガイドの先行パーティ
かなり傾斜で苦労してそう

それにしても「ぶっ立ってる!」

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我々は「インデアンクーロワール」から

傾斜は「大脱走ルンゼ」よりも寝ており
取付から源次郎尾根の稜線が見えていた
ここからはアックスとウィペットで登攀

予想通り尾根までは楽に乗り上げた

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源次郎尾根の向こうにはドーン!

「八ッ峰」

手前の平坦な部分「熊の岩」(クライマーの適泊地)

「かっこういい!」

いずれ「八ッ峰 登攀」~「長次郎谷 滑降」でも
やってみたい

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一服してるその細尾根の稜線は両側とも雪が
割れており気持ちが悪い

「長居は無用」

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ここからは「源次郎尾根」を登る
まず現れたのが岩稜の間を抜けるポイント
かなりの高度感の中、フリーで垂直の雪壁を登る
様に見えた
少し悪そうに見え躊躇したが弱点を突き突破
抜けた上部でスタンディングアックスビレイで
確保する

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難所を抜け、急峻な雪稜を登る
雪は予想通り硬すぎず、緩すぎない程度
踏抜きもなく上手くステップを作れる

Nパイセン、トレースありがとう

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頂上をロックオン!
この辺りが滑降ライン

「横から見ると45度は越えてる!」

超絶ビビってる私とは裏腹に若者のT氏は

「これくらい雪が緩めば楽勝~」と豪語

あとNパイセンもゴーサインを出せばもう
行くしかない事に ...

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サミット!

笑顔が引きつってる私

心臓が飛びだしそう ...

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しばし眼下の大展望を満喫して呼吸を整える

ピークで滑走モードに変え
1段下がったテラスに降りる

ここはリーダーの権限で順番を決める

1番 Nパイセン
2番 私
3番 Tパイセン

技量から見ても順当であるし何かあったら助けて
もらわないと

小さいノールを越え左にトラバースしてエントリー

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先行していたガイドパーティが最後の稜線まで
上がってきた

やはり「大脱走ルンゼ」の登りはかなりきつかった
のであろう
若しくは好きこのんで選んだのか?

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しばし躊躇する3人 ...

1番手のNパイセンがドロップ

すかさずジャンプターンを決める! こわ!

つづいて私

そんな決死のワンターンなど私にはでき様もなく
尾根に乗り上げるまでノーターン (笑)

やはり 平均斜度45度
「最大50度 」は怖い

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尾根で深呼吸をして、意を決して最初のターン!

「うぉぉぉぉぉー!」

ミスは許されないから超絶に怖い

転んでも止まりそうなザラメに感じるが
信用はできない
また縦溝をドロドロと流れるスラフにも警戒が必要

何となく感覚が分かってきて少し余裕が出てきた

残すは核心部のノド

Nパイセンがスキーで突破
無線で的確な指示をもらう

スキーヤーズライト
→ レフト → ライト
とクレバスに落ちない様に通過

無事に「大脱走ルンゼ」を滑降!

一気に安堵感がこみ上げた

生きてる

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まだ予断を許さない

平蔵谷のデブリとクレバス、落石に注意しながら
出合を目指す

でも先程までと比べると明らかに気は緩んでいる

平蔵谷出合に到着

どんな形であれ安全に降りて来れれば良い

それが「山スキー」

「やったぞー」

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「達成感、はんぱない!」

剱御前小舎まで 650m アップ

2時間ほどの地味な登り返しも清々しい

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総距離 : 16.5km

獲得標高: 2,352m

今回のコンディションで行かなければ
絶対に行けない

でも行って本当に良かった

宿題にはならなかったし (笑)

パイセン方、本当にありがとう!