大台ヶ原 サマーコレクション マルチピッチクライミング

山行日
山域、ルート
大台ヶ原 サマーコレクション
活動内容
マルチピッチクライミング
メンバー
石橋(L)、谷川(記録)

大台ヶ原 サマーコレクション マルチピッチクライミングの山行記録

昨年の11月,岩場で石橋さんからキャバクラ行きましょう!と言われて驚いた.聞き直すとサマコレと言っていたようで,調べてみると面白そうなルートであったので,参加させていただくことにした.それから半年間,当ルートに向けて外岩やジムでトレーニングしてきた.雨天のための延期を一度挟み,ようやく今回実施できた.適期は秋であることはわかっていたが,お互いの都合により梅雨の中実施することになった.案の定,染み出しや大量の蚊などで全く快適ではなかったし,2人とも2テンで散々な結果であったが,それでも誘ってくれた石橋さんと登れて良かった.またお互い強くなって登りたい.

行動記録

アプローチ及び1ピッチ目

ビジターセンターの駐車場で前夜泊前日から未明まで雨が降っており,岩が濡れている可能性が高いと考えられた.出発を遅らす案もあったが,アプローチで迷う可能性もあったため,早めに出発することとした.
案の定と言うか,間違って本来降りるべき沢の一つ東の沢を下ってしまった.崖の上に出て,登り返して,西にトラバースして,下って,また崖の上に出て,を数回繰り返す.最後は軽い藪漕ぎでサンダーボルト取り付きにたどり着いた.そこから岩壁沿いに西に進むとルンゼにあたった.クライミングシューズに履き替えてロープなしで登る.
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2ピッチ目(5.10a,谷川リード)

取り付きに着いて岩を見ると,岩は黒々と光っており,濡れているのがよくわかる.未明までずっと雨が降っていたから当然であった.休憩がてら30分ほど待ち,気持ち少しだけ乾いたかな?(絶対変わってないだろうな)と思うくらいで登攀を開始した.開拓当初の1ピン目は吹き飛んでおり,取り付きから現在の1ピン目までは目測5mほどある.最初は左の草付きを登り,旧1ピン目の残骸あたりから右にトラバースして,現1ピン目まで登った.本日一発目であるため,また,グランドフォールし得る状況であったため大変怖かった.1ピン目からはクラックが左上に伸びているので,レイバック気味に左上していった.終了点のテラスにはマントル気味で上がらないといけないが,それが地味にいやらしかった.
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3ピッチ目(5.10c/d,石橋リード)

最初の核心.だが石橋さんはあっさりと登り,自分も特に苦労することなく登れた.ガバやガバカチが多い.

4ピッチ目(5.10c/d,谷川リード)

2つ目の核心.核心部までは壁が寝ているので問題なかった.核心部ではうっすら被っており,余裕がなくなってくる.それでも微妙なホールドを繋いでいくが,それも見当たらなくなり,ピンも見つからずテンションをかけた.落ち着いて下から見ると,左に抜けると楽そうなのに右から登っていたことに気が付いた.ピンも左にある.落ち着いてルートを見ていればオンサイトできただろうに,残念...

5ピッチ目(5.8,谷川リード)

前ピッチから繋げて登った.前半はガバの多いフェイスで,後半は草葉の中を木の根なども使いながらのアルパイン的な登りになる.嫌らしい箇所はないのだが,とにかく濡れている.染み出しや泥でシューズが濡れていき,遂にはガバ足で滑ってしまいフォールしてしまった.フリー気味の前ピッチはまだしも,アルパイン気味の当ピッチでフォールしてしまったことが大変ショックであった.その後も滑ってしまったことがフラッシュバックして,恐怖心を抱えたまま登ることになった.石橋さんをビレイしていると,一度テンションがかかった.核心部でパンプしてしまったらしい.その後も腕は回復しきらず,石橋さんとしても怖いピッチとなったようであった.核心ピッチであったため,4ピッチ目で区切った方が良かったと反省した.

6ピッチ目(5.6,石橋リード)

草付きを左の側壁の途中までトラバースする.途中支点は灌木で取っていることが多かった.このピッチも濡れていて,グレードの割に怖い.

7ピッチ目(5.9,石橋リード)

2ピッチ目や4ピッチ目など,美味しいピッチのリードをいただいていたので,このルートの名物であるハンドトラバースの当ピッチのリードは石橋さんに譲った.というか,先程から怖い思いをしてばかりであったので,少し休みたかった.当ピッチの取り付きから目視できるハング下まで直上していき,ハング下からは左に伸びるクラックに沿ってトラバースをする.クラックの中は乾いており,素人のジャミングでも十分効かすことができ,余裕を持って登ることができた.本当に面白いくらいキマるので,暫く休んでお茶でもしたい気分であった.
このピッチ以降は日当たりが良く,岩は乾いており快適なクライミングが楽しめた.
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8ピッチ目(5.9,谷川リード)

岩の弱点を突いて登っていったらピンがなくなり,大きくランナウトして登ることとなった.どうやらカンテの右を登るのが正解らしく,途中でピンが右側に見えた.しかしトラバースもいやらしく,今のラインも壁は寝ていてガバばかりに見えたため,そのまま登ることとした.問題なく登り切ることができた.

9ピッチ目(5.9,石橋リード)

最後のピッチ.ここも岩の弱点をつくとカンテの左に行きそうだが,ピンは右についている.ここは素直にピンに従って登ることとした.下でビレイをしているとテンションがかかった.どうやら終盤の薄かぶりの箇所で足を滑らせてたらしい.最終ピッチで気が緩みそうだなと思い,一応油断はしないようにとは言っておいたが,冗談っぽく言っていので,態度が共わないと効果は薄いのだと実感した.
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下山

防鹿柵を巻きながら歩く.柵には扉もあるが,鍵が閉まっていて入れない.扉の締め忘れ対策には,誰も入れないようにしておくのが一番であろう.鹿の食害は植生に与える影響も大きいし,大学のフィールド調査が行われていたりするので仕方がない.疲れていたが遠回りしながら駐車場に戻った.

所感

自分はこのルートに誘われたことを機に当会に入った.まだ一年も経っていないが,これまで非常に多くのことを学ばせてもらい,山仲間にも巡り合えたため,入会して良かったと思う.また,このルートを目標に自分のクライミング能力の向上した.自分は優柔不断なことも多く,何もなければ恐らく入会していなかったかもしれないため,石橋さんにはとても感謝している.今回の結果は散々と言っても過言ではないが,それでも彼と一緒に登れて良かった.彼は今後数年間は日本を離れるため,暫く一緒には登れない.しかし帰国後にはお互い今より強くなって,また再チャレンジしたい.今度は秋の,絶対岩が濡れていない日で!!

参考文献

日本100岩場4 東海・関西増補改訂版(北山真)(山と渓谷社)179ページ