常念岳 東尾根 南東尾根 厳冬期縦走

山行日
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山域、ルート
常念岳 東尾根 南東尾根
活動内容
厳冬期縦走
メンバー
H、I(記)

常念岳 東尾根 南東尾根 厳冬期縦走の山行記録

星野秀樹さんの「雪山放浪記」を読んで、いつか登ってみたいと思っていた冬の常念岳東尾根。
今回は、良きパートナーと春先のような素晴らしい好天に恵まれ、念願の冬常念を満喫できた。
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2月24日(日) 晴れ

天気予報は、目まぐるしく変わる状況だったが、目標を達成すべく安曇野へ向かう。
雪のない須砂渡ダム手前ゲートに到着すると、既に8台ほどの車が路肩に停まっていた。
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準備して久し振りの重荷を背負い、林道を歩き出す。
林道は、日当たりの良い場所は雪がなく、日陰は積雪があり所々凍っている。
東尾根末端部は雪がなかったので、予定通り送電線巡視路入口へ。ゲートから1時間ほど。
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雪のない巡視路を辿り、鉄塔基部から笹藪の左斜面に入る。
200mほど笹藪を漕ぐと、尾根筋のトレースが現れる。
よく踏まれているようで、夏道に雪が積もったような感じだ。
所々にテープがあり、迷うことはないだろう。
標高1328mピークから見える前常念岳は、まだまだ遠い。
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有難いトレースを壺足で辿り、40~50分に1回の休憩を挟みながら、順調に高度を稼ぐ。
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標高1,750m付近から再び笹藪が現れ始め、心が折れそうになる。
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トレースがなければ、早々にそうなっていたかもしれない。
何とか踏ん張って登り、7時間少しかかって標高2,178mピークへ到着。
ここは傾斜が緩い樹林帯となっており、テント適地なようで、数張の跡があった。
疲れていたので、そのうちの1つにテントを張る。
テントを張ってから、近くの斜面でHさんと一緒に雪訓をする。
太陽が稜線の陰に隠れ、あっという間に身体が冷えたので、テントに潜り込む。
そこそこの標高なのに春先の様な暖かさで、テント内は超快適だった。

コースタイム:ゲート0720~0820送電線巡視路~1010標高1,328mピーク~1120標高1,600m付近~1315標高1,955mピーク1440標高2,178mピークC1
平面距離:8.17km、累積標高:(登り)1,582m、(下り)226m

2月25日(月) 晴れ

テントから出ると異様な暖かさに驚く。
朝陽を浴びつつテントを片付け、アイゼンを装着し、常念岳へ向け出発する。
一旦コルへ下り、再び登り返す。
この辺りの雪が深く、トレースがなければ苦労させられただろう。
森林限界の標高2,200m付近から一気に眺望が良くなる。
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テントを張るなら、標高2,265mピークまでが適地ではなかろうか。
朝陽を浴びる前常念を見てテンションが上がる。
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雪稜のトレースを辿り、標高2,350mピークで、ストックをピッケルに持ち替える。
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最初の岩稜帯は、ほぼ稜線上を右から巻き気味に登って行く。
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所々、雪質が固い雪面にざらざらの雪が載っているようなスリップし易い状況で悪いため、ピックを刺しながら、慎重に登る。
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最初の岩稜帯を過ぎると、傾斜が緩やかとなり次の岩稜帯が見える。
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前常念直下の岩稜帯は、やや傾斜が落ちるものの所々氷化しており、気が抜けない。
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岩場を縫うように登り、前常念岳に到着。
風は、思ったほど強くなく、常念岳頂上での更なる展望に期待が膨らむ。
避難小屋前にテント跡があったので、有難く使わせて貰うこととし、雪ブロック壁を補強してテントを張る。
一休みして、常念岳に向かう。
快晴の雪稜から見える周囲の景色に、二人とも自然と笑みが零れる。
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標高2,800m付近から待望の槍穂先が見える。
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ここはワンポイントの岩場がある。
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分岐に合流し、氷化した雪面の最後の登りを、アイゼンを効かせながら登る。
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そして、遂に目標であった冬の常念岳頂上に到着。
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最高の天候、最高の景色に、いつまでもそこに居たい心境に駆られる。
冬山では異例の暖かさから、1時間程景色を堪能してC2に戻る。
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夜は風もなく快適だったが、なぜか殆ど眠れなかった。

コースタイム:C10655~0745標高2,350mピーク~0945前常念岳~C21110~1205常念岳1310~1345C2
平面距離:4.13km、累積標高(登り)759m、(下り)286m

2月26日(火) 晴れ時々雪

さすがにテント内の水は凍っていたが、有難い意味で冬の標高2,600mの寒さではない。
テントから出ると、眼下には素晴らしい雲海が広がっていた。
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雲海から登る朝陽に、テントを片付ける手も自然と止まる。
常念岳に別れを告げ、急斜面の南東尾根を下る。
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岩場を縫うように下るのだが、前述のとおり雪質が悪く傾斜も強いため、かなりの個所をバックステップで下る。
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ここが本ルート中の一番の核心だった。Hさんも、さぞかしシビれたことと思う。
標高2,420m付近で漸く悪場も終わり、一息つく。
ここから森林限界下となり、雪面の踏み抜き地獄が始まる。
暫く単独行者?のトレースを辿って壺足で頑張っていたのだが、たまらず標高2,207mピークでスノーシューとわかんにそれぞれ履き替える。
踏み抜きが少しマシになり、担いで来た甲斐があったというものだ。
三股への分岐と別れ、南東尾根をぐんぐん下る。
少し下ると雲海下に入ったのだが、なぜか雪が降り始め、視界が悪くなる。
標高2,204m手前付近は尾根が広く、二重山稜なのでルートがわかり難い。
コンパスを確認しながら、南東方向に下る尾根に入る。
暫く広い尾根が続いたため、何度もコンパスを合わせながら進む。
標高1,750m付近から尾根は東方向となって狭くなり、辿りやすくなる。
標高1,596mピーク付近から尾根は南東方向となり、この辺りからテープが目立ち始める。
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標高1,450m付近から最後の難所、笹藪の激下りが始まる。
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再びアイゼンに履き替え、雪のない笹藪漕ぎの急下降に四苦八苦しながら南南東方向に下る。
何度もコンパスを合わせたつもりだったが、林道ヘアピンカーブ付近に飛び出した。
ここからの林道歩きが意外に長く、途中までの積雪も相俟って疲れた身体に追い打ちをかける。
ゲートに辿り着いたときには、既に陽が傾きかけていた。
帰りは、直ぐ傍のほりでーゆの快適かつリーズナブルなお風呂で汗を流し、安曇野にてサーモン丼を食べて帰路に着く。

コースタイム:C20655~0840標高2,355m~0920標高2,207m~10350標高2,024m~1210標高1,596m~1330林道1400~1500東尾根取り付き~1600林道ゲート
平面距離:11.26km、累積標高(登り)437m、(下り)2,306m

雨男の自分にとっては、珍しく?3日間とも素晴らしい晴天と春山並の暖かさに恵まれ、本当に幸運だった。
南東尾根は、トレースが下り単独行者のものしかなく、また、長い林道歩き、下部の強烈な笹藪漕ぎ、上部の急峻な登りを考えれば玄人向き?だ。
事実、東尾根の登りでは、下山する単独行者、パーティ等10人ほどとすれ違ったが、南東尾根は誰とも会わなかった。
殆どの登山者は、1日目に東尾根2,200m付近に幕営、2日目に常念岳を往復して同ルートを下山する1泊2日の行程のようだ。まあ、積雪量とトレースの有無にもよるだろうが・・・。
日程調整が難しい中、同行してくれたHさん、ありがとうございました!!