阿弥陀岳南稜 冬季アルパインクライミング

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  • 岩瀬、渡邉、橘(記)

阿弥陀岳南稜 山行記録

2年ぶりに阿弥陀南稜へ行く。前回は6名の大所帯だったが今回は新人1名を含めた3名で向かう。前回の教訓としては1.P3ガリーは意外と厳しい 2.下山予定の阿弥陀中央稜は複雑で迷いやすい。だった。今回はその点を踏まえて望む。

15日(土)2100JR西宮駅集合、高速を飛ばし翌3時麓の舟山十字路到着。車がたくさん停まっている。林道には雪は少ないようでタイヤが滑ることもほとんどなかった。早速テントを張って仮眠する。

翌7時起床。今日の予定は青ナギかP1あたり迄なのでゆっくりと支度して7時30分出発。旭小屋を経由して南稜末端に乗る。I君の記憶力はすごく、2年前のことを詳細に記憶していることにはビックリした。

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旭小屋は倒れ荘。
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初日はピーカン。
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行く手に聳える岩峰

尾根に出てしっかりした道を登って行くが、W君のテンポが上がらない。異常に遅いので調子でも悪いのかと聞くとこれが本調子だと言う。それなら仕方がないということでW君に合わせてゆっくりと登っていく。

青ナギ到着14時。周辺にもテント適地があったがP1あたりのコルまで進む。ここでもI君の記憶力が役に立った。私など全く白紙状態。3張りほど張れる広いコルで3人用テントを張る。

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いい天気。

強風に備えてブロックを積むが相反して一晩中無風だった。晩飯は鍋。なかなか豪勢な鍋であった。総選挙結果を気にしながら21時就寝。

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翌5時30分起床。昨日は超快晴無風のこれ以上ない天気だったが今日は曇りに向かうようだ。支度を整え、7時出発。朝は雪が氷化しているかと思ったが気温が高く朝から歩きやすい。相変わらずペースの上がらないW君を急かしつつ、P2を回り込み、気がついたらそこはP3ガリーの基部だった。ここまで簡単な雪稜歩きだったが、ここから突然氷化したルンゼが始まる。この落差が堪らない。ビレイ用の支点は探してもリングボルト1本しかない。それを頼りに40mの氷のルンゼをダブルアックスで登る。下部20mくらいが厳しかった。阿弥陀南稜は初心者向けバリエーションとされているがこの時期はアイスクライミングの経験がないと厳しい。
中間支点も取れずに40mザイルを伸ばし、やっとこさピッチを切る。

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1p目終了点よりフォローのW君を撮影
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1p目終了点より2p目をユマーリングするW君
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2p目をリードするI君
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2p目終了点よりラストのTさんを撮影

ここもリングボルト1本。そこからトップをI君に交代しまた40mで潅木でピッチを切る。中間支点なし。35m付近の薄氷の乗っこしが一番悪く、ここで滑ったら80m滑落して流動確保もできず支点のボルト1本も吹っ飛んで3人は揃って数百m滑落となるだろう。ブルブル。しかしI君も2回目ということで落ち着いており、うまく岩場を回り込んで悪場をかわす。そうこうするうちに下から単独重装備の若者がダブルアックスを効かせながら登ってきて我々をパスする。う~んなかなかの強者だ。装備も洗練している。そろそろ20年以上前に買った年代物のアックスを買い換えるべきか、氷を止めるべきか悩む。

最後の短い3ピッチ目でフォローのビレイをW君に頼んだらルベルソの側面に書いてある説明の絵を見ながらセットに悩んでいる。こんな所でルベルソの図柄を見ているようではダメだと判断して肩絡みで交代する。簡単な雪稜では肩絡みや腰絡み確保は有効なので臨機応変に活用したい。

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頂上はもうすぐだ。
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南稜を振り返る。
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空と雲が美しい。。
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空が近い。

さて、P3をやっと越すと、お次はP4がお出迎えだ。といっても直登は敬遠で左側をトラバースして巻く。しかしこの巻きもアイゼン歩行が不安定だと意外と難しい。ロープを出さずに慎重に巻いて行くと最後にP5が立ちはかどり、それも越すと遂にP6即ち阿弥陀頂上だ。ここまで喘ぎながら登ってきたW君に誰もいない(はずの)頂上への道を譲る。頂上到着12時。

少し風があるが気温は高めだ。写真を撮ったり行動食を摂ったりして30分ほど過ごし、下山にかかる。

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頂上にて。

下山は360度どこからでも降りれそうだがI君の言うとおりに御小屋尾根から途中で枝尾根の中央稜に乗り、下山する。ここでも1箇所危険箇所があったので慎重を期す場合はロープがあったほうが良いかもしれない。前回は下部岩壁あたりで懸垂下降の連続となる失敗があったので今回は何が何でも忠実に中央稜を降りたい。幸い妙齢?の女性2名パーティが登ってきているのでそのトレースを外さなければ全うな道を降りられるはず。しかし下部岩壁の手前でまたもやトレースは岩壁方向へ。そちらへ行くと懸垂下降必至だが・・。

ここでI君の判断で目印のたくさん付いた地点より左へとラッセルで進むと女性Pが付けたと思われるトレースに合流する。そこからは上手く岩壁を交わしながら尾根を忠実に降りる。途中、岩場の方からトレースが合流して来ている。おそらく先行下山者は岩壁上部へ行き、そこから懸垂で降りてきてまた雪面に残されたトレースを発見して合流したのであろう。なかなか楽しい尾根だ。こんな楽しい尾根をW君一人で先に降りてもらうわけにはいかない。

15時、林道合流、16時舟山十字路にめでたく到着。もみの湯で二日間の垢を流し、明日の仕事を気にしながら(他2名は明日も休みだが)一路神戸へと車を走らす。22時30分JR西宮駅到着、解散する。

NOTES:

  • 阿弥陀南稜はよく初級バリエーション入門ルートと紹介されている。
  • 確かにそう感じるがP3ガリーの登高にはこの時期アイスクライミングの技術と装備が必要になる。ピッケル1本では登ることができないので注意が必要だ。
  • また核心部の支点はすべてリングボルト1本、その他の中間支点は探してもないのでアイススクリュー等で自分で作らねばならない。もしくは全て自己責任でノーザイルで登るかだが、初心者には酷だろう。
  • もし滑ったときのことを考えるとゾッとするがそれがこのルートが人を惹きつける魅力となっていると思われる。赤岳主稜や石尊稜と違い、山中1泊できるし、登りごたえがある。帰った途端、また登りたくなってしまった。
  • 簡単な尾根ではあるが、12月は途中で2ピッチのアイスクライミングが楽しめる五目煮のような名ルートだと思った。

次回は、短めのアイススクリューとイボイノシシを持参しよう。