北海道山スキー 十勝 三段山と富良野岳ジャイアント尾根

山行日
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山域、ルート
北海道山スキー 十勝 三段山と富良野岳ジャイアント尾根
活動内容
山スキー
メンバー
金田 晏、乾 昌弘、数野 満義、数野 吉子

北海道山スキー 十勝 三段山と富良野岳ジャイアント尾根 山行記録

3月1日 晴

出鼻を挫かれるとはこのことか,埼玉県所沢にある東京航空交通管制部のコンピューターのトラブルで2時間遅れの出発で11時半に旭川空港に着く。午後は富良野スキー場で軽く足慣らしして明日からの入山に備える。スキー場から十勝連峰が良く見え,富良野岳がひときわ大きく見える。

3月2日 曇のち雪 夕刻より晴れる

8時タクシーで富良野のホテルを出る。富良野駅へ行くのを変更して吹上温泉に直行する。Timeismoneyだ,8時50分標高1000mにある白銀荘に着く。

装備を調えて9時40分,三段山目指して白銀荘を出発する。広く切り開かれた窪地状の緩斜面を先行者の踏み後を追ってシールで登る。周りの斜面にはいたるところにシュプール跡があり入山者の多さを物語っている。

2~3パーテイ追い越して森林限界の標高1400mに10時40分着。ここから上部はガスで見通しが利かないのでコンパスで方位を定めて三段山の山頂を目指す。一瞬ガスが薄くなってぼんやり太陽が覗きそうになるが,すぐガスに閉ざされてしまう。部分的に氷化している斜面が出てきたので全員スキーアイゼンを装着する。

1650mで山頂に続く稜線に出る。硫黄の臭いが鼻を突き,ガスで全く見えないが下は安政火口らしい。安政火口側に張り出している雪庇に気を付けながら傾斜の緩い尾根を登って三段山(1748m)の山頂に12時50分着。不思議なことに山頂の標識には内地の山で見られるようなエビの尻尾が全く付着していないのである。注意してみると周辺の露岩にも雪が付着していない。火山の山なので地熱によるものなのか?

風雪の中で記念撮影をして13時00分下降開始。氷化した斜面の下までアイゼン,シールを装着したまま下り,安全なところで外し滑降開始。と云ってもホワイトアウトに近い状態なので森林限界まで手探り足探りの滑りでせっかくの斜面も台無しだ。樹林帯にはいるとガスも消え素晴らしいパウダーを滑りよい所を選んで下り15時00分白銀荘帰着。

チェックインを済ませ炊事室で調理具の説明を聞いて2階の8畳の和室に落ち着く。ゆっくり露天風呂で身体を癒しているとお天気もすっかりよくなり前十勝が夕日に染まり始めた。今日の予定は三段山の偵察だったがTimeismoney効果のお陰で三段山の頂に立つことが出来たので,明日は富良野岳を滑ろう。このお天気がせめて明日の午前中まで続いてくれれば...

食材は数野君夫妻が調達して宅急便で白銀荘へ送ってくれたおかげで手ぶらで入山でき質素な中にも心のこもった豪華な夕食を仲間と囲みお酒がすすんで話が弾む!!明日は全員で富良野岳のジャイアント尾根を滑ることで話がまとまる。ジャイアント尾根に行くには白銀荘から登山口の「バーデンかみふらの」まで徒歩で2時間,パーテイの...いや自分の歳を考えるとキツイので白銀荘の管理人さんに車で送ってもらえないか交渉すると快く引き受けてもらえたので6時30分の出発とする。

タイム:白銀荘9:40~森林限界(1400m)10:40~三段山(1748m)12:50~13:00~白銀荘15:00

3月3日 曇のち雪

白銀荘6時30分出発,軽トラに乗って尾根を回り込むと視界が開けて富良野岳の北尾根とジャイアント尾根がよく見える。「バーデンかみふらの」前の駐車場まで送ってもらい道路を少し下ってヌッカクシ富良野川の砂防ダムの見えるところでスキーを着けて7時00分出発。

河原に向かう林道を下ってスノウブリッジで対岸(北尾根)に渡りラッセル跡を追って北尾根を緩やかに巻き気味に登って完全に雪で埋まったベベルイ川を標高1090m地点で渡ってジャイアント尾根に取り付く,7時30分。

小雪が舞い出した。針葉樹林帯を登って広い岳樺の斜面に出る。森林限界に黄色いテントが1張りブロックに囲まれて設営されていた。十勝岳,三段山はすでにガスに包まれこっちへも広がってきた。森林限界(1350m)から上は雪面は風の影響でクラストしているのでスキーアイゼンをつけて1550m(9時35分)まで登るが天候の悪化とこれより上部はスキー滑降には余りよくない雪面なので登高を断念する。谷一つ隔てた北尾根はガスに閉ざされて全く見えなくなった。各自装備を調えている間にジャイアント尾根にもガスがかかり始めた。

10時00分滑降開始,森林限界の黄色いテントの所まで一気に滑りティータイムをとり樹林帯のパウダーを各自のレベルで思い思いに滑る。途中で2匹の犬をつれて登ってくる5人パーテイに行き会う。下りすぎないようにトラバース気味に滑って10時30分ベベルイ川の取り付き点を経て北尾根を回り込み「バーデンかみふらの」に10時50分着。白銀荘帰着12時50分。

タイム:白銀荘6:30~バーデンかみふらの駐車場6:50~砂防ダム7:00~ジャイアント尾根取付点7:30~ジャイアント尾根最高登高点1550m9:35~10:00~ジャイアント尾根取付点10:30~バーデンかみふらの10:50~白銀荘12:50

3月4日 雪

今日も雪だ。計画した2つの目標は達成したし今回の山行の基本計画をしてくれた数野夫妻が,午後の便で帰京するので天気も悪い事だし三段山の樹林帯のパウダーのトレーニングな滑りを楽しむことにする。

降りしきる雪の中7時30分白銀荘を出る。初日と同じルートをラッセルしながら登るがやはり森林限界辺りから上部はホワイトアウト状態だ。10時森林限界1400mで登高をやめて滑降に移る。白銀荘に向かって切り開きの右手の樹林帯を滑る。古いシュプールはすっかり埋まりバージンスノーの斜面を各自思い思いに滑る。

途中で深雪パウダーを滑る3人の写真を撮ったりしながら10時白銀荘帰着。しばし休憩するという数野夫妻を残して乾と2回目のトライで1350m(12時)まで登って切り開きの上部斜面から左手の樹林帯を滑って白銀荘へ。数野夫妻は帰る身支度で忙しそうだ。

昼食後3回目のトライで1350m(14時50分)から先行者のシュプールを追って左手の樹林帯へ滑り込む。平坦な林間滑走を続けると浅い谷の源頭に出る。出だしは急斜面のパウダー,樹にぶつからないようスキーをコントロールしながら谷芯まで下る。右岸沿いに先行者のシュプールを辿って下り右手の小尾根に立つと白銀荘の上に出た。時間は15時を少し廻った所なので4回目のトライで今滑ったルートが良かったので再度登って滑り16時10分今日の行動を終わる。

夕食後,十勝連峰に精通している富良野市在住の高校の先生三浦氏と旭川市在住の大学の先生石井氏と懇意になり「明日前十勝へ登ってシュナイダーコース(注:1)を滑りましょう。ご案内します。」と話しがあり飛行機の時間が心配だったが石井氏が空港まで送って下さるというので同行することにする。

(注:1) 1930年オーストリアのスキーの名手シュナイダーが十勝岳を訪れたとき滑ったコース

3月5日 雪

乾君が風邪でダウンしたので3人で行くことにする。本人も残念だろうが仕方がない。8時白銀荘出発,玄関先から切り開きの末端を横切ってエゾアカマツやエゾクロマツ(三浦氏からの受け売り)の樹林帯へ入る。

十勝岳爆発記念碑を経て振子沢を横断し九条武子の歌碑の所から前十勝への尾根に取り付き登り始めたが深いガスでホワイトアウト状態になる。これではスキーにならないので三浦氏の判断で登高中止(8時40分)三段山へ転進することにする。再び振子沢を渡って対岸の尾根を登る。ラッセルを交代してもう一つ浅い谷を渡って三段山の尾根に取り付き白銀荘からの登路と合流し森林限界まで登って白銀荘へ下る(9時30分)。

一休みして再度トライ,石井氏は「1抜けた!」と云うので三浦氏と森林限界まで登り昨日乾君と最後2回滑った白銀荘の直ぐ上に出るコースを滑ることにする。昨日のシュプールは三浦氏等のもので一寸ルートを外れたとのことで今日はコースどおりの滑りをしようと三浦氏が先陣を切る。

流石!!北海道人の滑りは1味も2味も違う。深いパウダーでもスピードがあり,あっという間に視界から消えていってしまう。私の滑りを見て良くないところを指摘して深雪パウダーの滑り方を伝授して貰うが時間が足りない。あと1日滑り込んで教わりたいが残念だ。11時50分白銀荘へ戻って北海道の山スキーを終える。

ー完ー
記 金田 晏

後記

今回初めて北海道の山を滑るのに偶然とはいえ十勝を選んだ事に感謝したい。「雪の結晶」の研究者として有名な中谷宇吉郎がその研究のため白銀荘(旧)にこもって顕微鏡下のガラス板に落ちてきた雪片を極寒に耐えながら来る日も来る日も覗いておられたのかと思うと感慨もひとしおである。「不思議を解決するばかりが科学ではなく,平凡な世界の中に不思議を感ずることも重要な要素であろう」 中谷先生の科学観を表す言葉である。